イルム裁判とは?

みなさん、民族の名前を取り戻す裁判をしている金稔万(きむいんまん)さんをご存知ですか?


20093月、金さんは、大阪・梅田のビル建て替え工事第1期工事に本名で就労しました。


ところが、同年9月の第2期工事のとき、2次下請けの担当者は、突然、金さんに「通名でいってくれるか」と言い、問答無用で金さんのヘルメットのシールを「きん」から「かねうみ」に貼り変えるなどしました。


金さんは通名強制により精神的苦痛を受けたとして、20105月に大阪地裁に損害賠償請求訴訟を起こしました。


裁判の過程で明らかになったのは、第1期工事の際に誤った手続がなされたことでした。元請の大林組現場事務長が基本的な間違いをしたこと(特別永住者の金稔万さんが就労する際には不要な「外国人就業届」という書類を1次下請に提出させたこと)、また、1次・2次下請が元請の誤りを知りながら「元請の言うとおりにしておかねば」と考え、元請の誤った指示にそのまま従いました。そのため、1次・2次下請は、第2期工事の際、本来不要な「届け出」の提出を回避するという「脱法」目的で、金さんに対し、金海(かねうみ)という通名の使用を現場で強制したのです。


今年130日の大阪地裁判決は、被告企業の言い分のみに依拠し、2次下請け業者代表者は自らも特別永住者であり、金さんに仕事を優先的に紹介していたことなどから、第2期工事の際には、「今日から働きたい」と言う金さんに対し「書類の準備に34日かかるが、通名ならすぐ働ける」と打診し、金さんが了解したとし、強制はなかったと結論づけました。

 

この判決は、「脱法的行為」により通名を強制したにもかかわらず、下請けに通名を強制された結果だけに着眼した判断であり、安易に通名使用を求める日本社会の現実に一切考慮しない「門前払い」ともいえる判決でした。しかも、日雇い労働の実態への理解をまったく欠いた判決でもありました。日雇いはその日の仕事の契約であり、34日先まで考慮した雇用契約は結びません。日雇い労働の現場で、「今日から働きたい」、「書類の準備に34日かかる」というやりとりはありえません。

 

このように大阪地裁判決は、金稔万さんの心の叫びを無視し、その主張をことごとく退ける極めて不当な判決と言わざるを得ません。