イルム通信(No.14 / 2013年1月30日発行)

イルム裁判、いよいよ判決言い渡し!

 

 

朝鮮人であることを否定しかねない通名を強いた企業            川瀬俊治

 

朝鮮人であることを否定しかねない通名を強いた企業、国を相手取った裁判が日本で初めて大阪地裁に起こされ、1月30日判決が出る。

大阪の建設現場で日雇い労働に従事していた金稔万(キムインマン)さん(52歳)―韓国籍の在日2世―で、ある日突然通名使用を強要されたとから、雇用先の建設会社(元請けの大林組、下請け2社)と国を相手取り大阪地裁に損害賠償請求を求めたもので、裁判所がいまだ未解決のこの植民地支配問題にどのような判断を示すか。

われわれの期待は、金稔万さんの内面の苦渋を搾り出すように吐露した法廷での熱情、意を尽くされた弁護側の主張にどれほど裁判所が応じるのかだ。金稔万さんとともにわれわれは30日午後の法廷で喜び合いたい。

 

つまり自分の問題だ      竹本衣江

「解ってない」

金稔万さんから問われ続けています。

「日本人の問題や」

徐文平さんから言われました。つまり自分の問題であると。

イルム裁判に関わるまで知らなかったこと沢山ありますが、「知らない」では済まされない。知れば知るほど自分に返ってくる。

以後、朝鮮民族の友達と「名前」のことに始まり深い話しを聞くようになりましたが、裁判を通じて出会った皆さんからも直に生の声を聞き、これからも自分に問い続けていきます。デザイン:佐野彰則

イルム裁判の判決日をまえに    

いよいよ判決が出ます。この裁判がここまでこぎつけられたのは、ひとえに弁護士の空野さん、奥田さん、弘川さんのすぐれた技量と、そして、のしかかる重圧に耐え抜き、その意志を貫いた金稔万さんの多大な辛抱によるものです。ここまで本当にお疲れ様でした。私は支援にかかわった者として、この裁判を充分に支えて来られたかとかえりみれば心許ない限りです。

この裁判を通して私があらためて考えさせられたことは、私たち在日コリアンのイルムが今なお、この日本社会の日常において、いかにないがしろにされているかということでした。それはすなわち在日コリアンのサラムとしての人権が、いっこうに回復されないままでいるということです。昨今は在日に対する差別が少なくなったということを私たちはよく言いますが、最大の人権であるはずのイルムを名のるということをできないことこそが最大の差別ではないか、そのように思い知らされました。

今も在日からイルムを奪っているその元凶が、日本社会が持つ経済的暴力、そして在日の人権を抑圧するその暴力を戦前の植民地時代から戦後の今に至るまでずっと放置し続ける日本国家の不作為であるということが、この裁判によってあぶりだされてきました。

それに加えて、その大企業の経済的暴力によって抑圧されている下請け企業が、さらなる弱者である日雇い労働者を抑圧し支配するという構図のなかで、被告の孫請け会社の社長が在日コリアンであるということが、私たちに複雑な思いを抱かせることにもなりました。

彼は法廷で「私自身としては、過去に(創氏改名を)強要されたという歴史も知っていますが、(略)、現在では通名も自由に使えると思いますので、各個人個人の通名使用は自由だと思います」と証言しました。しかし在日コリアンの私たちは、自由によって通名を名のっているのでしょうか? 抑圧があるからこそ通名を名のらざるを得ないのではないでしょうか? 「通名使用の自由」というのは、それは抑圧された自分自身から目をそらすための誤魔化しなのではないか? 法廷で「私は在日韓国人です」と強く声を張り上げた彼にだからこそ、私は言いたい。「自分を誤魔化していては、抑圧には決して勝てない」と。

今回どのような判決が出るかはわかりませんが、いずれにせよ、在日コリアンのサラムとしての自由の証である「イルム」を名のれる社会を求めての闘いが、金稔万さんのこのイルム裁判によって、今また新たに始まったのだと、そう私は心しています。

 

国境と時代を超えた侵略と植民地主義の歴史をも串刺しに         中村一成

新大陸に連行された黒人奴隷の末裔に、歴代大統領と同じ名を引き継ぐ者が多いのは何故か?

領土や占領地に「ユダヤ人」を増やすため、アフリカの難民キャンプからイスラエルに「輸入」されたエチオピア人が入国と同時に典型的ユダヤ人の名を冠するのは何故か?

イギリスから連邦諸国に棄民された児童入植者が出生時に与えられたものとは違う名を名乗るのは何故か?――

「名前を戻してください」。

2012年7月の本人尋問。法廷で振り絞った金稔万さんの叫びは、ブラジル人やベトナム人の子どもが通名を欲しがり、スーパーの中国人店員が日本名を名乗るこの国の醜悪な現実と同時に、国境と時代を超えた侵略と植民地主義の歴史をも串刺しにする。

判決の節目に、これからも続く闘いの意義を再確認したい。

 

ぼくたちの中では全面勝訴だ   藤井幸之助

イムマンさんとは、桜ノ宮にあった、祈りの場「龍王宮」の記憶を記録するためのプロジェクトでずっと一緒だった。本岡拓哉くんと3人でほんとによく通った。あの暑い夏の日々、解体・撤去の過程をつぶさに見つめた。済州島出身2世のイムマンさんと、ぼくたち日本人では当然「龍王宮」に対する思いは違った。去年は本場の済州島にヨンドゥングッを見に行くことができた。調査はまだまだ続く。

 イルム裁判はそれと同時進行だった。多くの方々に支えられてやってきた。苦しさの中に楽しさも。

ぼくたちの中では裁判は全面勝訴だ。こういった一連のことを一緒にできたことがぼくには一番大きな成果だった。

ただし、朝鮮人が民族名をあたりまえに名乗れる社会に一日も早くすることが、相変わらずぼくたちの課題だ。そのためにももっと朝鮮語を学ぼう!

―――――――――――――――――――――――――――――――

■第19回口頭弁論判決言い渡し

 いよいよ判決言い渡しです。ぜひ、傍聴にお集まりください! 夕方の集会も!

日時:1月30日(水)13:15~(どなたでも傍聴ください)

★開廷30分前に、裁判所1階南側入り口付近で傍聴抽選券配布。

場所:大阪地方裁判所808号民事法廷(大阪市北区西天満2-1-10)

        地下鉄・京阪「淀屋橋駅」「北浜駅」下車 

■“判決”報告集会

日時:1月30日(水)19:00~21:00

場所:ふるさとの家(大阪市西成区萩之茶屋3-1-10)06-6641-8273

   JR環状線「新今宮駅」/南海「萩之茶屋駅」/地下鉄「動物園前」下車   

    西成警察署斜め前、西成消防署出張所隣 

内容:弁護団報告(空野佳弘さん・奥田愼吾さん・弘川欣絵さん)ほか

参加費:500円(終了後、交流会・飲食代別)

主催:金稔万さん本名(民族名)損害賠償裁判を支援する会