イルム通信 No.6 2011年12月19日

名前は、「名のる人と呼ぶ人」でなりたつ 

                梁愛舜(民族を考える研究会)

 

はじめに金稔万さんの良心と勇気を讃えたいと思います。社会生活において個人の尊厳がおかされることは少なからずあります。これは間違っている、これは譲れない、と思うことがあっても、提訴することはなかなかむずかしいことです。しかも、相手が大きな力を持っていればなおさらです。

だけど金稔万さんは一歩を踏み出しました。ウリイルム(私たちの名前・朝鮮名)を使いたくても使えなかった多くの人びとのこころを抱いて。

 

今も名のりたくても名のれない状況

在日朝鮮人はウリイルムを名のりたくても名のれない状況が、今日においてもあります。「アルバイト・就職ができない」「昇格できない」「いじめにあう」という事態は進行形でめずらしいことではありません。また、「採用するけど通名を使うように」と要求されることもあります。生計を維持するためウリイルム使用を諦めているひとは数えきれません。いつどこでも自由にウリイルムを名のれないのが現実です。

個人のつよい意志と努力でウリイルムを貫くことができると考えているひともいます。現に壁にぶつかりながらもウリイルムを徹しているひともいます。それはすばらしいことでそうありたいと願います。だけど、ひとはさまざまです。だれもが同じようにはできません。そもそも名前を名のるのにつよい意志と努力が必要でしょうか? なぜつよい意志と努力が必要なのか逆説的に考えれば、社会の状況がみえてきます。ウリイルムを名のるそのひとの、個人の問題にすることはできません。

 

「通名」は取り替えられた創氏名

日本の植民地支配当初、朝鮮人の名前は日本語に言い替えられ、つぎに創氏改名によって、名前がそっくり日本風の名前に取り替えられました。この取り替えられた創氏名が「通名」として日本に残ってしまいます。そして在日朝鮮人に「通名」の日本名があるため、ウリイルムではなく日本名使用をいまも強要されています。それは金稔万さんの事例がよく示しています。本人はウリイルムを名のりたくても、スムースにいきません。名前は名のる側からだけではなく、名前を呼ぶ側からも考えなければなりません。

さかのぼりますが、創氏改名は法令によって施行されました。通常、その法令を無効にするばあい、やはり法によって閉じられなければなりません。ところが、1945年の解放後、在日朝鮮人の名前にたいしてなんの措置もありませんでした(解放直後朝鮮半島の南北において創氏改名無効の法的措置がとられています)。もちろん、日本は敗戦し、その植民地支配にたいするすべての権限を失い、創氏改名も自動的に無効になったという解釈はなりたちます。そして、朝鮮半島において復活した法にしたがえばよいということになります。しかし、これは創氏改名をしいられた当事者の、名のるひとだけが認識できることです。

 

創氏改名は日本人の問題

創氏改名は朝鮮人に日本風の名前を強いましたが朝鮮人だけの問題ではありません。創氏改名の当事者ではない日本人にたいしては、朝鮮人を創氏改名の名前で呼ぶことを前提にしており、それを押しすすめたものです。この、朝鮮人を日本風の名前で呼ぶことを当然視させられた日本の人びとにたいしてこそ、軌道修正が必要だったのです。そのためにも、日本において創氏改名無効の具体的な措置、たとえば公の機関が「朝鮮人は復活した本来の名前を名のり、だれもがその名前を尊重しなければならない」と宣言したり、明文化する必要がありました。呼ぶ側も一緒に変わらなければ復活にはなりません。

名前は対人関係において効力が発揮され長く記憶されます。名前を呼び合うことで人間関係が築かれていきます。金稔万さんはウリイルムを名のって生活を営み、地域や学校、職場、あらゆる場面で出会う人びとと、ウリイルムで人間関係を築きたいと願っています。このしごくあたりまえのことが、あたりまえに実現しない道理はありません。金稔万さんとともに、裁判に注目し、歩みたいとおもいます。

 

【写真】10月20日、第9回口頭弁論終了後、弁護団の奥田愼吾さん(中央)から、裁判の進行を聞く。右は弘川欣絵さん左は空野佳弘さん。左端は原告の金稔万(キムイムマン)さん。

 

■次回口頭弁論の日程 傍聴に来てね!

裁判において、傍聴席をいつもいっぱいの人で埋めるということは裁判官の心証に大きな影響を与えます。

残念ながら、日本の裁判所は平日の日中の開廷ですので、なかなか大変です。が、そこは何とか万障お繰り合わせの上、裁判所にお運びください。終了後、毎回報告集会をおこない、その後、イムマンさんを囲んで、お昼ご飯を食べながら、有意義な時間を過ごしています。

【第11回口頭弁論】    12月19日(月)11:00~

【第12回口頭弁論】 2012年1月26日(木)11:00~

大阪地裁510号民事法廷(大阪市北区西天満2-1-10 地下鉄・京阪「淀屋橋駅」「北浜駅」下車)にて開廷されます。開廷15分前に傍聴券の抽選があります。30分ほど前までに(裁判所工事中のため)高等裁判所1階南側入口付近にお越しください。もちろん【入場無料】です。

 

【第16回弁護団会議】  12月10日(土)12:30~

空野佳弘弁護士事務所所にて

※裁判は、原告と弁護士だけではやりきれません。さまざまな形での支援なくしては国や大企業とは闘えません。裁判を進めるにはどうすればいいかを、あれこれ議論しながらやっています。参加希望者はご連絡ください。

 

■第11回口頭弁論のあと、進行協議が持たれる予定です。

口頭弁論も10回目をむかえ、多数の準備書面や証拠物を提出、論点が絞られてきました。いよいよ裁判の佳境、「証人尋問」へと向かっていきます。ぜひ傍聴にお越し下さい!

9回口頭弁論(10月20日(木))では、国、大林組、下請け会社から、原告側の求釈明に対する答えの書面が出てきました。金稔万さんの雇用管理の書類やシステムについて、裁判官が被告側により詳細な回答を求める場面もありました。国については、創氏改名から、戦後の権利回復、差別をなくす責任があったとの原告側からの求釈明については一切答える必要がないとの不誠実な回答でした。国の姿勢はわかっていたつもりですが面と向かって言われるとあらためて腹立たしく、また、こういう返事が来るとわかっていても法廷で問いただした弁護士さんの精神力の強さを感じました。私たち支援者もめげずにがんばっていきたいと思います。(m)

 

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裁判の弁論期日にも持参していますので、傍聴の際にも購入していただけます。年明けにはいよいよ証人尋問も始まるかという段階に入ってきました。ぜひ傍聴の方もよろしくお願いします!