高裁不当判決・事務局の見解

差別を容認する裁判所
――アイデンティティ侵害を認定しながらも判決は棄却

金稔万さん本名(民族名)損害賠償裁判を支援する会・事務局

  昨年(2013年)、11月26日に行われた二審判決では、一審と同様に金稔万さんの主張を認めず控訴を棄却した。当日、高裁には多くの支援者の方々と共に、数十社のマスメディアが高等裁判所に詰めかけるなか、原告である金稔万さんは、とても緊張している面持ちで支援者と共に裁判所に入っていった。そして、判決は「控訴を棄却する」という、決まりきった短い言葉を述べるだけで終わり、集まった人の中から口々に「不当判決だ」、「差別を容認している」「許せない」「日本は何も変わっていない」という言葉が怒りとともに発せられた。そして、裁判が終わってから金稔万さんが口にした言葉は、「本当に疲れた……」という深いため息と、裁判は棄却されても「運動としてもっと頑張らなあかん」ということだった。これまでの裁判を通じて、金さんが民族名をとりもどす過程がどれほど長い道のりであり、苦しく、勇気のいることだったろうか。この闘いは日本における民族差別の問題を名前という存在証明の根源的な局面から問うものである。そして、未だ在日朝鮮人の人々がこの名前を巡る差別を受け続けていることが明らかになってきた。それは年齢、職業に関わりなく日常的な抑圧として今もなお行使され続けている。こうした現実を、結局のところ裁判所は全く理解していないどころか、それをあたりまえの社会通念・慣習として肯定的に捉えている。そのことを以下では具体的に判決文に即しながら述べていきたい。 
 現在、金さんは最高裁へと上告し、弁護団によって最高裁へ文書が提出された。私たちは、これから裁判とともにより広くこの通名強制の問題を訴えていきたいと思う。

1、差別を容認する裁判所
 判決文には、つじつまの合わないところがたくさん出てくる。そのもっとも顕著な部分は、今回の通名強制は「アイデンティティを否定する著しい人格侵害」と認めながらも、不法行為にはあたらないとしている。侵害はイコール不法行為ではないのか。非常に倒錯した論理からはじまるのだ。裁判所が持ち出す理由としては、次の二点にまとめられている。①「在日韓国人に関する通名による呼称は、社会的には当該個人を他人から識別し特定する氏名としての機能を有し、我が国の社会一般の認識として是認されていたものである」(判決文、13頁)とする。そして、②「在日韓国人に対して害意を持ってことさらに通名の呼称」をしていないが故に、不法行為ではないと判断した(同13頁)。
 この二点について、まず①の箇所は、通名使用のはじまりである日本の植民地支配を黙認するものである。そうした抑圧の歴史がその根本にあるのであって、通名はたんに他者と区別するためだけのものではない。通名使用は、日本社会における在日朝鮮人への蔑視、仕事上の不利益、結婚差別、あらゆる人間関係や日常生活上の差別から在日の人々が身を守るため使用せざるを得ない状況がある。判決は、そうした差別構造を温存させてきた日本社会を批判することなく、逆に「社会一般の認識として是認されてきた」と、差別する社会の側に立って判断するのだ。
 そして、次の②の箇所は、今後あらゆる在日外国人に対する差別認定に関わってくるであろう、重要な部分である。この点において、差別が不法行為と認められるのは加害者側の「害意」の有無である。この基準に照らすと、金さんのヘルメットに書かれていた「きむ」という名前のシールをはがし捨てて、通名のシールを張ったことは、判決要旨では「アイデンティティの侵害」(判決要旨4頁)であると認められているにもかかわらず、「配慮には欠けるが」、「害意を伴う」ものではない(19頁)となる。続けて、ここでいう「害意」とは、「暴行や脅迫」(19頁)が伴うものであり、その水準ではないというのである。また、同会社の従業員は社長から通名でいけば「その姓名から外国人と判断されないのですぐに就労できると言われたために、金さんに通名を使わせたと述べている(一審の二次下請陳述)。この発言からは、通名が日本人と区別できないのを利用して、日本人になれば雇うという明確な差別的意図が表れている。ここにも「暴行や強迫」はもちろんない。しかし、こうした在日朝鮮人だけではなく外国人全般に対する暴行を伴わない発言はいくらでも成立しうる。これからも裁判所が「害意」の有無にもとづいてのみ判断するのであれば、あらゆる差別を許し、公認していくと言わざるを得ない。

2.被害者に厳しく加害者にやさしい判決
 また、その他の棄却理由としては、本人が通名使用に対して「反対の意思を表明」し、本名で働きたいことを申し出なかったため、「了承している」と判断されても仕方がないというのである(19、21、22、23、26頁)。ここで、仮にいじめやセクハラの認定基準に即すならば、いじめが成立するのは心理的、物理的な攻撃に対して精神的な苦痛を感じた時点であると規定されている(「いじめ防止対策推進法」2条1項)。またセクハラも労働者の意に反する性的言動として規定され(厚生労働省「事業主の皆さん  職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!!」4頁)、双方ともに被害者の苦痛を中心に把握されているのである。裁判所が本来即すべきなのは、こうしたマイノリティの権利を守るためにつくられた法令ではないだろうか。通名の強制も、上記同様にマイノリティの民族的アイデンティティの根本を形成するものであり、それが侵害されないように当事者の立場に立って判断するのが当然ではないだろうか。
 また、今回のような建設現場のなかで日雇いの労働者が拒否し続けることがどれだけ困難であるかを考えるとなおさらである。金さんの陳述にもあったように、日雇労働は当日の電話でのやり取りで雇用関係が結ばれ、その日が終わると契約が終了するものである。労働者の立場が長期的に保障されるような安定した雇用関係ではない。そんななか金さんは本名で働きたいとはじめに伝えており、二次下請けの相手方企業は明白に認識している。しかし、何度も通名拒否を繰り返すと、職を失う不安があった。このような日雇労働現場での暗黙の抑圧―被抑圧の関係があることは考慮されないままである。
 ただし、この点については建設現場に限った事だけでなく、例えば就職の面接の際に通名はありますかと聞くことや、結婚、入居、あらゆる職場や人間関係において在日朝鮮人が差別的な抑圧のもとにあって、本名を名乗ることが如何に困難であるかをまず理解する必要がある。そのことが念頭にあるなら、反対の意思を表明しなければ了承していることになるという安直な判断には陥らないはずである。

3. 元請け大林組、そして国の責任について
 今回の裁判では、国、元請け大林組、一次下請会社、二次下請会社を訴えている。直接的な通名強制は二次下請会社によるものであるが、そこに矮小化されては、本質的な日本社会の差別構造が見えづらくなってしまうだろう。その点について具体的に述べると、そもそも通名が強制されたのは大林組の在日外国人労働者に対する対応のずさんさがあったからだ。通名が強制される半年前、「きむ」で就業していた頃、大林組はその「きむ」という名前から不法就労を未然に防ぐための外国人就業届を提出するよう下請業者に求めた。しかし、それ以前の段階で金さんのような「特別永住者」はすでに届けられていた外国人登録証などによって提出義務がないことを確認しなければならなかった。(「特別永住者」であることは植民地支配という歴史的経緯から配慮する義務がある。)それにもかかわらず、大林組は確認の手続きを省き、一次下請、そして二次下請会社(金さんの直接の雇用主)へと通達を行った。その後大林組は外国人就業届が本来必要なかったことや、誤って届出の提出を求めたことも何ら訂正しないままに終わったのである。そして、その後、二次下請は外国人就業届を出す煩わしさから通名強制へと踏み切ったのだ。こうした一連の届出は大林組が不必要であることを徹底して告知すべきであったし、大林組のはじめの誤りが通名強制を根拠づけたといえる(判決文でもこの点、「否定しがたい」と記す。20、24頁。)そしてこれら手続き上のことがいくら誤解であったとしても、通名を強制した以上、元請けの過失として問われるべきである。
 最後に判決文における国の責任については通名使用が「我が国の社会一般の認識として是認されてきたものである」(27頁)と述べ、ここでも通名使用の始まりである日本の植民地支配の歴史性がなかったかのように扱われている。戦後、日本社会の通名使用は、国がなんら行政上、立法上の是正措置をとってこなかったことも問われないまま放置されている(27頁)。

4.本名であたりまえに生きていける社会に向けて
 今後、最高裁においては上記のことを中心に訴えていくとともに、裁判と並行して本名を名乗れる社会に向けて運動を展開していきたい。具体的には大林組への申し入れをおこない、在日朝鮮人、在日外国人労働者に対する企業としての雇用実態について追及していきたいと考えている。また、そうした運動と並行して、今の若い世代の在日朝鮮人の置かれている現状を聞きとりながら、「通名」使用の問題をより深くとらえていきたいと思う。

 

 

■■■■新聞報道など■■■■

 

●「通名使用:在日韓国人控訴棄却 大阪高裁「強制」は認定」毎日新聞
   http://sp.mainichi.jp/m/news.html?cid=20131126k0000e040148000c&inb=mo

●「通名強制、二審も在日韓国人敗訴 大阪高裁、違法性否定」共同通信
http://www.excite.co.jp/News/society_g/20131126/Kyodo_BR_MN2013112601001731.
html


●「通名強制、二審も在日韓国人敗訴 大阪高裁、違法性否定」静岡新聞
   http://www.at-s.com/news/detail/853622032.html
 
재일한인 '일본이름 사용강요 부당' 소송서 패소
 在日コリアン '日本名使用強要不当' 訴訟で敗訴
 2013/11/26 【聯合通信】
 http://www.yonhapnews.co.kr/bulletin/2013/11/26/0200000000AKR20131126103600073.HTML?from=search
 
(도쿄=연합뉴스) 조준형 특파원
= 직장에서 일본식 이름 사용을 강요당해 정신적 고통을 받았다며 일본 법원에 손해배상 소송을
 제기한 재일한인 2세가 2심에서도 패소했다. 
 교도통신에 따르면 오사카고등법원은 26일 재일한인 2세인 김임만(53)씨가 건설업체와 국가를
상대로 제기한 100만엔의 손해배상 청구 소송에서 김씨의 항소를 기각했다. 앞서 지난 1월에 나온
1심 법원의 판단을 유지한 것이다. 
 2009년 오사카시의 하청을 받은 종합건설회사에서 일한 김씨는 회사 측이 자신의 한국 이름 대신
'가네우미'라는 이름이 새겨진 헬멧을 착용하도록 강제한 것은 인격권 침해라며 해당 업체와 국가를
상대로 정신적인 손해를 배상할 것을 요구하는 소송을 제기했다.
 
 그러나 1,2심 법원은 '김씨가 일본식 이름에 개의치 않는다'는 의사를 밝혔다는 업체 측 주장을 받아들였다.
 
(東京=連合ニュース) チョ・ジュンヒョン特派員
= 職場で日本式通名使用を強要されて精神的苦痛を受けたと日本(法院)裁判所に損害賠償訴訟を申し立てた在日コリアン 2世が 2審でも敗訴となった。
 共同通信によれば大阪高裁は 26日、在日コリアン 2世金稔万(53)さんが建設業社と国家を相手に申し立てた 100万円損害賠償請求訴訟で金さん控訴を棄却した。 先立って去る 1月に出た1審(法院)裁判所判断を維持しただ。
 2009年大阪市総合建設会社下請で働いた金さんは会社側が自分韓国名前に代わり'カネウミ'という名前が刻まれたヘルメットを着するように強制したことは人格権侵害であるとし該当業者と国家を相手で精神的な損害を賠償することを要求する訴訟を申し立てた。
 しかし 1,2審(法院)裁判所は '金さんが日本式通名でも気にしない'と言う意思を明らかにしたという業者側主張を受け入れた。

 

神戸新聞 2013年11月26日 夕刊
神戸新聞 2013年11月26日 夕刊

コメントをお書きください

コメント: 1
  • #1

    成清光介 (月曜日, 23 5月 2016 21:18)

    「金捻万損害賠償裁判を支援する会」  御中

    『なぜシナに対しては「イルム裁判」を仕掛かけないのか?』

    朝鮮人は、
    在日朝鮮人に本名を名乗らせないのは人格権の侵害だ、謝罪しろ賠償しろ、とクレームをつけ大暴れしています。
    しかし、静岡では逆に、本名を名乗ることを強制され朝鮮人としての人格権を侵害された、謝罪しろ賠償しろと真逆の論理を振り乱して提訴しています。
    誰が見てもこの明らかな矛盾を「ケンチャナヨ主義」で放置した儘では、先ず大方の理解は得られないのは自明の理、一体在日朝鮮人は本名を名乗りたいのか、それとも生涯偽名(通名)を名乗りたいというのか、どちらなのでしょうか?

    これは朝鮮総督府が嘗て、「創氏改名」を押しつけたことに淵源がある、との御主張がありますが、これほどとんでもない言いがかりはありません。当時朝鮮人が日本名を名乗ることで日本に何か都合のいいことがあったでしょうか? これこそ歴史の歪曲もいいとこで、「創氏改名令」は朝鮮人からの強い要望から出たものです。寧ろ日本政府は朝鮮人が日本名を名乗ることを許しませんでした。併合直後の1911年朝鮮総督府は総督府令第124号「朝鮮人の姓名改称に関する件」を施行し、朝鮮人が日本式姓名を名乗ることを厳禁していたのです。それでも朝鮮人側から世界の一等国日本人になりたいとの要望が殺到し、朝鮮総督府はやむを得ず渋々認める方向にカジをきった、これが歴史の事実です。しかし当時の朝鮮総督府南次郎総督はこれを朝鮮人に強制してはならないと何度も命令書を出しているぐらいです。決して強制したなどとはあり得ない話です。創氏改名が強制であったというなら、朝鮮人名の儘日本軍人として大活躍した金錫源中佐、洪思ヨク中将の存在を説明出来ません。
    ここでもまた何でも強制にでっち上げる朝鮮人の民族的宿痾が顔を出してきますが、この辺りの経緯については「その『書類朝鮮戸籍改正令』に判を押したのは私だ、当時決して強制ではなかった」、と朝鮮総督府時代の官僚だった元文部大臣奥野誠亮氏がはっきりと公言しているところでもあります。
    ところで、
    朝鮮人は日本人に対してしつこく「イルム裁判」(漢字を唾棄しているくせに)を起こし常に被害者を演じて「クレーマービジネス」に勤しんでいるようですが、
    中国人には何故「イルム(名前)裁判」を仕掛けないのでしょうか。
    ご存じの如く同じ漢字国シナ人(チャイナはシナからの派生語)は朝鮮人名・地名を決して朝鮮読みなどしません。当然ながらシナ語読みで通しています。台湾でも同じです。
    しかしそのシナ、台湾に対して「イルム裁判」を提訴したとは寡聞にして知りません。どうやら「イルム裁判」とは世界中探しても日本にだけ存在する世界唯一の「希有な人権裁判」のようです。
    朝鮮人が日本人を日本語読み呼びするのは、漢字を唾棄し表音文字しか持ち合わせのない朝鮮人にはそうするより他に方法がないからであって、それは朝鮮人の勝手な国語政策の選択結果、何もこれに「相互主義」とかの大仰な話を持ち出すことではありません。
    嘗て、
    在日朝鮮人崔昌華氏が、「自分の名前をNHKが日本語読みしたのは人格権の侵害だ、謝罪して損害賠償1円を払え」、と訴えました。この事件は最高裁まで行っても完璧に門前払いを喰いましたが「イルム裁判」の嚆矢となりました。その後「積水ハウス事件」なる裁判が引き起こされ、なんと今度は損害賠償請求金額は日本が甘い顔をし続けている間に五〇〇万倍に膨れあがってしまいました。
    そして次「金捻万本名を使用させろ裁判」、更に上記静岡の「本名を名乗りたくない、偽名を使わせろ裁判」と続きます。
    当に日本人には言いたい放題やりたい放題の朝鮮人です。
    しかし、
    朝鮮人の論理矛盾はどうにもならないレベルに達しているようですが、旧宗主国シナ人に対しては一切イルム裁判など起こしません。
    シナ人は朝鮮人を決して朝鮮読みなどしていません。日本に対してあれほど「クレーマー」を演じ乍ら、シナに対して一切クレーマ-を演じないのは不思議な現象です。この際、中国中央電視台を相手取り、「朴槿恵を何故朝鮮語読みしないのか。シナ語読みしているのは大中華思想を押しつけるもので朝鮮民族の人格権を毀損している、謝罪して1元の損害賠償を払え」、と日本に対して咆哮する万分の一の声でも出して「国家的一大イルム訴訟」を起こすべきではないだろうか。
    思えば、
    日本が500年にも亘る李氏朝鮮の紊乱政治で糞だらけ泥だらけになった朝鮮人を救い出し、爾来一貫して莫大な金をかけ、温かい風呂に入れて溜まりに溜まった垢を洗い流し、ピカピカのべべを着せてやって半島史上空前絶後の安寧平和発展の一時代を築いたのはたったの35年間でしたが、シナ人が朝鮮を属国にして牛豚の如く扱っていたのはほぼ1000年。朝鮮人は決して認めたくないでありましょうがこれが歴史的事実です。
    朝鮮人にとっての究極の恥辱、「大清国皇帝功徳碑・三田渡碑」、「慕華舘」、「迎恩門」を叩き壊して「独立門」を建てることが出来たのはどこの国のお陰だったでしょうか。朝鮮人は「独立門」は日本から独立したときの記念だと嘘の歴史を擦り込んでいるようですが、しかし1000年の属国時代を通じてその間宗主国シナが道路・橋一本、学校一校創って呉れましたか?朝鮮は何万人の貢女貢人を差し出しましたか?
    もしもシナ人に日本人と同じような慈悲の精神性があるならば、屹度「小中華」に対しても謝罪して渋々賠償に応じてくれるに違いありません。
    以上被害者ビジネスに興じ続ける朝鮮人に対してあれこれ諫言を呈してきましたが、幸いなことにというべきか、残念ながらというべきか、これまで唯の一度たりとも当の朝鮮人から抗議を受けたことがありません。
    ここまで言われても何も反論しない朝鮮人とは一体どんな民族か、どう考えているのだろうか、正直不信感は募る一方です。
    これまでの指摘に対してもし何かご意見があれば、日本・朝鮮との真の友好のために忌憚のないご意見を賜れば幸甚です。

    bufu4647@h6.dion.ne.jp
    2016.5.23.成清光介